忍者ブログ
http://atirakotira.blog.shinobi.jp/
お話を書いています。 まだ整理整頓できてないですが、少しずつ更新していきますので宜しければお立ち寄りください。 日記や雑記も混じってます。
54  53  52  51  50  49  48  47  46  45  44 
2024-11-22 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2008-12-10 (Wed)

「顕微鏡はもう習ったかい?」
「うん、葉っぱを見たよ」
「そうかい、そうかい、沢山粒々が見えたろう?」
「うん!たくさん見えた!箱の中に粒々があったよ!」

斜め向かいの家は子供がよく集まっていた。


庭には頑丈そうな木が何本も植わっていて、その横にプラスチックの壁に覆われた部屋があった。
これといって華やかな花があるわけでもないが、子供の目からは珍しいものも沢山あった。
いや、いつ見ても珍しく映る位にその家の家主の話はそこにある植物を語った。

「この葉っぱには箱があったかい。うんうん、その中の粒々はどんな形だったかい?」

説明できるほど言葉を知っていたわけでもない、身振り手振りでそれを伝えた。

「で、こういうのがミトコンドリアって言うんだ!」

覚えたての言葉を誇らしげに口にするものもいた。
こういうとき性格がよく表れるもので、大抵はその後口を噤む羽目となる。

「ミトコンドリアには目に見えない小さなモーターがあるんだよ」
「モーター?」
「中の粒々が動いていただろう?植物が生きている証拠なんだ」
「音聞こえる?」
「音かい、それはどうかな」
「木の音は聞こえるよ、耳をこうやってくっつけたら」
「うんうん、そうだね」
「たくさん集まってるから聞こえるんだ!」

 

んなわけねぇ

 

時折その家に出入りする人たちが「教授」と呼んでいた。
今思えば何かの教授だったのだろうが、ただの「おっちゃん」としか思っていなかった。

「この実変な実」
「どれかな?」
「これ、赤い実の先に青い実がついてる」
「それはまきの実、そこの木に沢山なってるだろう?」
「本当だ!なんかグミみたい」
「赤い方は食べられるんだよ」
「食べる!」

青い方は白っぽく粉を吹いたように生っていたせいで、緑が青く見えていた。
赤い方は柔らかくほんのりと甘い実だった。
グミよりも四角い感じで青い実を取るとくぼみが出来た。
ほこりを落として食べるように言われた。

そしてこう教えてくれた。


「昔は”猫のキンタマ”といったものだ」

赤い実を口に運ぶ子供らの手が止まったのは言うまでもない。

PR
■ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
迷い道の向こう側へようこそ
迷い道の向こう側にあるお話は、
各カテゴリーがお話の題名
(若しくはジャンル)になっています。


「日記」はそのまま日常のことです。

「植物なお話」は植物が何らかの形で
 係わっているおはなしです。

「迷い道のその向こう」はチョット
 変わったファンタジー系(?)の
 お話です。

「Gear」はパラレル系です。このお話
 のみ、条件付きになっています。


 
聴くお話
別館『さわさわ森』聴くお話サイトで
配信中の「聴くお話」です。
「読むお話」は『迷い道の向こう側』でも
公開しています。


聴くお話では沢山の方に
お手伝いしていただいております。
自己紹介
  
 名前 佐伯 知花
 趣味 書くこと
     植物観賞
 嗜好 日本酒
     紅茶
     PCパーツ店巡り
        
 


STRing


 
SEARCH IN THIS BLOG
忍者ブログ × [PR]
PRODUCE BY SAMURAI FACTORY
"迷い道の向こう側"