今年は夏の生り物が例年以上に良い年で毎日のように夏の旬を頂きました。
秋の生り物は寒さが遅かったせいか、生り具合もまばらの様子。
それでも今日食べた柿は立派なもので、どっしりと座った丸みと重みに似合う甘さでした。
食後に食べたのでさほど気にはならなかったのですが、柿はからだが冷えます。
冷たいデザートにならある意味ぴったりなのですよね。
鍋物の後や風呂上りになら丁度いいかもしれません。
干し柿もそろそろ下がる季節でしょうか。
『ゆらゆらゆれて』 9
帽子が落ちそうなくらい揺れています。
片手で帽子を押さえて、
もう一歩でランタンを握り締めて走ります。
それでもランプの火はちらりともしません。
気が付くと家のすぐ近くの道まで走っています。
さっきまでは真っ暗だった周りが、
月明りで明るくなっています。
家の近くまで来るといい匂いがします。
「ただいま、帽子5つ貰ってきたわ」
「おかえり、トルティア。
ずいぶん遅いから、
迎えにいこうと思っていたところだったよ。」
「ごめんなさい」
「でも、よくがんばったね、ありがとう。
おや、このランプはどうしたのかい?」
「帽子やさんがかしてくれたの。」
トルティアはそう言うと、
ひょろりとしたアルティエットに帽子を渡しました。
「おぉこれだこれだ。
ありがとうトルティア。
そして、これはご褒美の帽子だ。
大切にするんだよ。」
トルティアは帽子をかぶりなおして窓に向かうと、
顔を右へ左へ向けて窓に映った自分を見ます。
「おかえりトルティア、
さぁ、夕食の用意が出来たよ。
帽子を置いてテーブルにおつき。」
食事をはじめるとトルティアは森であった事を
みんなに話します。
「この火はそのジャックオーランタンから貰ったのよ」
とても怖かった事は内緒にして。
テーブルにはそのランプも明るく灯っています。
「ランタンを作ったらこの火を灯すといいよ。」
おばあさん魔女はそう言うと、
ランプの火を小さくしました。
ゆらりともしなかった火が小さく灯ります。
食事が済むとトルティアとスニティアはカボチャをくり貫いて
ランタンを作りました。
そしてジャックオーランタンの火を灯すと、
玄関の外に飾りました。
明日はハロウィンです。
朝目が覚めたトルティアは、
急いで玄関外のランタンを見に行きました。
小さくですがちゃんと灯っています。
そして、トルティアの作ったランタンには
小さな下げ袋が引っ掛けられていました。
「昨日ジャックオーランタンに渡した下げ袋だわ。」
それを取ると中を見てみました。
「クッキーは全部食べたのね。」
トルティアは少しだけ嬉しくなりました。
ランタンの灯がゆらゆら揺れました。
『ゆらゆらゆれて』 8
前にお話でだけ聞いた事があります。
カボチャのランタンが頭のおばけ。
昨日はおばけじゃないランタンを作る為に
かぼちゃを探したばかり。
「ランタンの火が消えちゃったの。
火を分けてください。」
精一杯の勇気を振り絞って言いました。
「キエテルネ。
魔法デツケレバイイジャナイカ?」
「魔法まだ使えないの。」
「フ~ン。
オヤ?イイニオイガスル。
クッキーノニオイガスル。」
ジャックオーランタンが近づいてきました。
トルティアは急いでクッキーの入った下げ袋を
外すとずいっと前に突き出しました。
「どうぞ!とってもおいしいのよ!あげる!」
そう言って渡すと、
後ろに少し下がりました。
「火ヲ分ケテアゲテモ良イケド、
コノ火、何ノ火カ知ッテイルノカイ?」
ジャックオーランタンは続けて言いました。
「コノ火ハ昔、私ガ悪魔ニ貰ッタ火ナンダヨ。
ムカーシ、私ガ天使カラ見放ハナサレテ、
真ッ暗ナ夜ヲ歩イテイタ時ニ、
悪魔ガ分ケテクレタ火ナンダヨ。
ソレデモ良イイナラ分ケテアゲヨウ。」
こんなに明るい温かそうな明かりが悪魔に貰った火なんて、
トルティアはびっくりしました。
だけれど、それよりも天使じゃなくて悪魔が分けてくれたなんて。
ジャックオーランタンの明かりが揺れます。
トルティアは少し考えました。
そして持っていたランプを両手でジャックオーランタンの方に出して、
少しずつ近づきました。
「きっとやさしい悪魔もいるのよ。
それにその火はもうあなたの火だわ。」
ジャックオーランタンはランプを受け取ると、
少ししゃがんで足元に落ちていた木の枝を拾うと、
大きな口の隙間から木の枝に火をとり、
ランプに灯しました。
「ソウ、コレハ私ノ火。
ジャックオーランタンノ火。
モウ消エナイカラ安心シテ帰ルトイイ。」
トルティアはランプを受け取ると、
お礼を言って小走りに道に戻りました。
『ゆらゆらゆれて』 7
どんどん暗くなって、
森は金色でもセピア色でもありません。
まるで魔女の服のような藍色に見えます。
「こんなに長い道だったかしら」
頭の帽子がユラユラするので、
ゆっくり歩いてきたせいかしら?
そう思いながらも少しだけ急いで歩きます。
風がひゅっと足元を過ぎます。
ほっぺたの横もひゅっと過ぎます。
手元をひゅっと過ぎたときでした。
「あっ!」
ランプの火が消えてしましたした。
辺りは真っ暗です。
ほんの少しだけ月明りが見えます。
「大丈夫、森の道はまっすぐだわ。」
大人の魔女と一緒の時ならチョチョッとつけてくれるのに、
と思いながらもランプをさっきよりもっとぎゅっと握って
歩き出しました。
「大丈夫、まっすぐよ、それに何も聞こえないわ。
誰もいないんだから、大丈夫。」
暫く歩くとずっと先の右側、
森の方に入ったあたりに明かりが見えます。
その明かりはさっきまでついていたランプよりも
ずっと明るい光です。
「誰かいるのかしら?」
でも道からはずいぶんそれています。
「あれだけ明るいんですもの、
きっと立派なランプだわ。
火を分けてもらいましょう。」
トルティアは明かりの方に向かいました。
まっすぐの道から森の方へ。
近づいていくと明かりが一つ出ないことがわかります。
一つはとても明るい光。
周りに小さな光が地面に。
トルティアは急に止まりました。
誰かいるのはわかっていました。
でも、違うのです。
「オヤ?コンナトコロニ。」
近づいてくるその誰かの頭が一番明るいランタンなのです。
トルティアはびっくりしたやら怖いやらで、
どうしたらいいのかわからなくなりました。
「コンバンハ、小サナ魔女サン。」
「こんばんは。」
目の前にいるのはジャックオーランタン。
『ゆらゆらゆれて』 6
帰りの森もサクサク、パシパシ、シャクシャク。
頭に重ねられたとんがり帽子がユラユラ、フラフラ。
少しだけゆっくり歩きます。
お店を出てどのくらいたったのでしょう、
ほんの少しですが、森の中が薄暗く感じます。
「森は早く暮れるのかしら?」
行きがけは金色に見えた森がセピア色に見えます。
何だかおなかもすいてきたので、
クッキーを一つだけ食べます。
クルクルサクサク
ハラハラパシパシ
シャクシャクシャク
森に足音が響きます。
クルクルサクサク
ハラハラパシパシ
シャクシャクシャク
トルティアは立ち止まって後ろを振り返りました。
薄暗くなったせいか、なんだか足音が後ろからも
追いかけてくるような気がします。
「大丈夫、誰もいないわ。」
そうつぶやいて歩き出します。
ランプをぎゅっとにぎって。
『ゆらゆらゆれて』 5
やがて森を抜け、町が見えてきました。
レンガ作りの建物が見えてきます。
ずっと向こうにもたくさんの店が見えます。
森から抜けて一本道。
町につながる一本道もそろそろ終わり。
レンガの建物が3軒あります。
少し離れて奥のほうにはもっとたくさん。
「すぐよ、すぐ。
すぐ見つけるわ。」
それもそのはずです。
一本道から一番はじめにある建物の壁には
羽の絵の付いた帽子型の木の看板がかけられています。
トルティアは店の前で大きく深呼吸を一回しました。
そして戸をあけます。
「こんにちは。」
「いらっしゃいませ、おや、小さなお客さんだね。
一人かい?」
「おつかいを頼まれたの。
一人で来たのよ。」
トルティアは下げ袋から手紙を出すと、
それを渡しました。
「帽子だね、5つもあるけど持てるかい?」
店主はそう言いながら戸棚からとんがった帽子を5つ
重ねてテーブルに置きました。
「この小さいのはおじょうちゃん用かな?」
チョットだけかぶってみるとそれはぴったりです。
この帽子だけかぶって他の帽子を手で持って帰りたい気分です。
でも、持てそうにも無いのです。
トルティアは次に小さい帽子をその上に、
そして次々の重ねてかぶりました。
「ほらこれで大丈夫!」
これなら両手も開いたまま帰られます。
すると店主が言いました。
「魔女の家は森の奥だったね。
これから帰ると日が落ち始めて暗くなるかもしれないから、
このランプを持ってお帰り。
あぁ、ランプはまたこんど町に来るときにでも
返してくれれば良いからね。
そうそう、これはおつかいのご褒美だ。」
店主は小さなランプとクッキーの入った袋をくれました。
トルティアはクッキーを下げ袋に入れました。
「ありがとう、それじゃ帰るわ。」
「気をつけてお帰りよ。」
「はい、さようなら」
「さようなら。」
五つの帽子を頭に、手にはランプを持って帰ります。
「簡単簡単、おつかいなんて簡単だわ」
初めてのおつかいも頭の帽子も、
そして首からさげた袋の中のクッキーも、
みんな嬉しいものばかり。
後は家に帰るだけ、
もう一度落ち葉のきれいな森を帰るだけ。
『ゆらゆらゆれて』 4
トルティアはなんだか少しお姉さんになった気分です。
いつもなら大人の魔女やスニティアが一緒なのに、
今日は一人です。
「おつかいなんて簡単よ!
それに、町には何度か行った事あるわ。」
冬と春に何度かお使いに連れて行ってもらったのです。
でも、秋の森は初めて見るものばかりです。
お日様の日差しが森の隙間から差し込んで、
道はまるで金色のトンネルのようです。
上を仰ぎ見ると所々に木の葉が金色に透けて見えます。
よくみると森の木々はとても色とりどりで、
蔓や蔦の先にはいろんな色の実や葉がついていて、
まるでクリスマスツリーの飾りのようです。
歩くたびにサクサク、パシパシ、シャクシャクと
落ち葉がなります。
風が吹くと木の葉がクルクルと舞います。
「家の周りの木もきれいだけど、
こんなにたくさんじゃないわ。
見た事ない実まで!」
クルクルサクサク
ハラハラパシパシ
シャクシャクシャク
飛び跳ねるように走ったら、
足元の木の葉も跳ねます。
クルクルサクサク
ハラハラパシパシ
シャクシャクシャク
『ゆらゆらゆれて』 3
次の日の朝、5人の魔女達は食事を終えると、
それぞれに仕度を始めました。
「マヌエットさん、何をしたらいいの?」
ころりとした魔女はマヌエットと言います。
スニティアはマヌエットに聞きました。
「さて、今日は奥の釜戸で
パンを焼かなくてはいけないから、
くべる木切れを少し増やしておかなきゃね」
マヌエットが言いました。
「エプロンをする前に持ってくるわ。」
スニティアはそう言って家の横の小屋に向かいました。
「アルティエットさん、私のおつかいはどうすればいいの?」
ひょろりとした魔女はアルティエットと言います。
トルティアはアルティエットに聞きました。
「帽子のお代は先に払っておいたから貰ってくるだけだよ。」
アルティエットはそう言うと、こう続けました。
「森から町へは一本道だから大丈夫だね?
この辺の森は狼もいないし熊も出ないから安心だけれど、
道から外れちゃだめだよ。
そうそう、これをお店の人に渡すとすぐにわかるからね。」
「わかったわ、まかせておいて!」
トルティアは初めてのお使いにわくわくしながら答えました。
そして帽子屋で渡すようにと渡された、
小さな手紙の入った下げ袋を首からさげました。
「それじゃ行ってくるわ、いってきます」
『ゆらゆらゆれて』 2
「いいカボチャは見つかったかい?」
腰を丸めた藍色の服の人が言いました。
「なんだか小さなカボチャばかりだったわ」
「カブより少し大きな位だったわ」
姉妹はそう言うとテーブルに準備された
カボチャのスープを食べ始めました。
「明日もきっとカボチャのスープね」
「明後日もきっそそうね」
この家の人たちはみんな魔女です。
姉妹はまだ魔法は使えないけれど魔女です。
「明日はおつかいと料理の手伝いをしてもらうよ」
おばぁさん魔女が言いました。
「森の向こうの町外れに帽子屋がある。
そこの店主に新しい帽子を頼んでおいたんだよ。
帽子をかたどった板に、羽の絵の看板がある店だから
すぐにわかるさ」
ひょろりとした魔女が言いました。
「料理はお菓子とパンを沢山作るから大忙しになるよ。
どっちを手伝うか決めてくれるかい?」
ころりとした魔女が言いました。
「トルティアにはお料理はまだ無理よ。
釜戸のお鍋のおしゃもじに届かないわ」
「そんなことないわよ。
椅子に乗ればちゃんとかき混ぜられるわ。
でも、明日は私がお使いに行ってあげる。」
妹の魔女はトルティアといいます。
「それじゃ、スニティアはお料理に。
トルティアはおつかいを頼もうかね。」
姉の魔女はスニティアといいます。
おばぁさん魔女はそれぞれにそれぞれを頼む事にしました。
『ゆらゆらゆれて』 1
時折冷たい風が吹きます。
ひゅっと音を立てて足元を過ぎます。
一吹きする度一枝二枝、飴色に木々を彩ります。
森の奥の小さな家。
すぐそばには小さな小屋。
収穫された野菜が積まれています。
「今年のカボチャは小さいのね」
「カブよりは大きいから大丈夫」
もうすぐハロウィンです。
カボチャのランタンを作る為に
丁度良さそうなカボチャを探します。
「どれも小さくて、くり貫くのは大変そう」
「それでもカブよりは上手く出来るよ。
昔はカブをランタンにしていたんだって。
ほら、こんな風にぶら下げて・・・」
「なんだか貧相ね」
小さな姉妹はこの家に住んでいます。
扉から誰かが出てきました。
「カボチャは決まったかい?」
背の高くひょろりとした藍色の服の人が言いました。
「もう日も暮れるから持って家にお入り」
背が低くころりとした藍色の服の人が言いました。
「はーい。」
「はーい。」
姉妹はスカートの裾をつかんで、
カボチャを幾つかその裾でくるんで言いました。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
各カテゴリーがお話の題名
(若しくはジャンル)になっています。
「日記」はそのまま日常のことです。
「植物なお話」は植物が何らかの形で
係わっているおはなしです。
「迷い道のその向こう」はチョット
変わったファンタジー系(?)の
お話です。
「Gear」はパラレル系です。このお話
のみ、条件付きになっています。
配信中の「聴くお話」です。
「読むお話」は『迷い道の向こう側』でも
公開しています。
聴くお話では沢山の方に
お手伝いしていただいております。
趣味 書くこと
植物観賞
嗜好 日本酒
紅茶
PCパーツ店巡り